「黄色い線の内側でお待ちください」
駅のホームで、電車を待つときに、構内によく流れている放送です。
この放送、私は当たり前のように聞き流していました。
しかし、この注意事項を守るのが難しいくらい、黄色い線の内側の幅が狭い駅が、大阪の中にあることが分かりました。
しかも、その駅は、大阪最大のターミナル駅の隣にあるというのです。
一体、どこなのでしょうか?
阪急中津駅とは?
その答は、阪急中津駅になります。
阪急中津駅は、大阪最大の繁華街である梅田駅の隣に位置しています。
しかし、意外にも、地味な住宅街が広がっていることが特徴的です。
駅のホームは高架の上にあり、改札は薄暗い高架下にあります。
以前は、昭和レトロな飲み屋もあり、大阪で有名なスポットでもありました。
ホーム自体の幅は3メートル程度しかないので、パッと見、「狭い」と感じます。
このため、上りと下りの黄色い線がとても近く、黄色い線の内側は、人が1人はいる程度の幅しかありません。
上りの電車と下りの電車がすれ違ったり、同時に停車していると、すさまじい圧迫感があります。
ちなみに、この話題をしたときに、大阪以外に住んでいる人からよく言われることがあります。
「中津駅を見に行ったけど、そんなに狭くなかったよ。」
これは、地下鉄中津駅と間違えているのです。
中津駅は、阪急中津駅と御堂筋線中津駅の2つが存在しています。
これらは、名前は同じ駅ですが、徒歩で7、8分かかるほど離れており、全く別の駅と認識したほうがいいと思います。
阪急中津駅の歴史
なぜ、阪急中津駅のホームは、こんなに狭くなってしまったのでしょうか?
梅田を起点とする阪急電車は、十三駅まで、神戸線、宝塚線、京都線の3本の路線が並行して走っています。
上り・下りも含めて、6本の線路が並んで、淀川を渡っています。
この3本の路線が、十三駅で3つの方向に別れていくのです。
阪急中津駅は、この十三駅と梅田駅のちょうど間にあります。
つまり、阪急中津駅には、3本の路線が通っているはずなのです。
しかし、阪急中津駅には、神戸線と宝塚線は停車しますが、京都線だけ停車しません。
というか、京都線の停車するホームがありません。
なぜ、京都線だけが、仲間はずれになっているのでしょう?
もともと、阪急中津駅は、阪急電鉄の神戸線として開業しました。
そして、現在の阪急京都線は、もともと、京阪電鉄が建設した鉄道路線(新京阪線)で、終点は十三駅でした。
阪急と京阪は、戦時中、国策で合併し、戦後、分離するという奇妙な歴史をたどるのですが、京阪電鉄が建設した新京阪線は、阪急のものとなってしまいます。
その後、阪急の路線となった京都線が、梅田まで延伸したのは、1959年(昭和34年)のことでした。
このとき、中津駅には、もともと阪急のものだった神戸線と宝塚線のホームが存在していましたが、延伸する京都線のホームを設けるスペースがありませんでした。
このため、京都線だけ中津駅をスルーするといういびつな構造になってしまったのです。
阪急中津駅のとっても狭いホームの意味するところは、阪急と京阪の深い歴史だったのです。